2026年8月21日に上諏訪駅前のすわっチャオで緊急開催された「温暖化と農業、なにが起きているか、どう対処するか」のご報告になります。
【開催概要】
- 日 時:2026年8月21日(金)14:00~16:00
- 会 場:すわっチャオ イベントスペース
長野県諏訪市諏訪一丁目6-1 アーク諏訪3階
【講 師】
岡部 孝典氏 日本農業新聞 みどりGXラボ 統括ディレクター
「気候変動が揺るがす食と農」~危機と可能性~
深野 祐也氏 千葉大学園芸学研究科 先端園芸工学講座 准教授
「営農ソーラーが『普通』になるために」
帶川 恵輔氏 兼業農家(茅野市)ソーラーシェアリング実践者
「変わることで残ってきた、変わることで残してゆく」
~今の農業は昔の革新だった、変わらないことの方が農業らしくない~
【講演概要】
1.簡単なまとめ
気候変動が農業に及ぼす影響と、ソーラーシェアリングの可能性を中心に議論した。
岡部氏は、日本農業新聞の取材やアンケート結果を示し、米の品質低下や収量減、野菜・畜産における高温被害、農作業中の熱中症の増加、対策コストの上昇など、農業が温暖化の最前線にある現状を説明した。
深野氏は、世界と日本におけるソーラーシェアリングの研究・実態を紹介し、遮光率と収量の関係は品目・品種・気候によって大きく異なること、また、データ不足が規制設計の難しさにつながっていることを指摘した。
帶川氏は、中山間地における歴史的な農業適応(水温め湖の建設、早期育苗技術など)を紹介し、現在の高温化や担い手不足の中で、ソーラーシェアリングが農地維持と収入補完の一つの手段として位置づけられつつあることを説明した。
質疑応答では、一般の農業に対する理解不足、補助金や政策の弱さ、行政内における環境部門と農林部門の分断、リジェネラティブ農業、ソーラーパネルのリサイクルなどが話題となった。参加者は、高温対策を起点として、社会全体で気候変動と向き合う必要性を共有した。
2.詳細
自然エネルギーと農業の持続可能性
会議の冒頭、自然エネルギー信州ネットの高木および浅輪より、挨拶と説明があった。温暖化と農業に関するトピックを取り上げ、持続可能な農村の実現方法や長野県の農業の現状について共有することを説明した。また、調査結果や地域での取り組みについて紹介し、参加者との今後の対話を深めることを目指しているとした。
温暖化と農業への影響
岡部氏から、日本農業新聞の立場から農業への温暖化の影響について詳細な報告が行われ、米の品質低下、害虫の活動増加、農作業中の熱中症による死亡、農家の収入減少など、具体的な問題が説明された。過去の平成期と令和期の米騒動の比較を通じて、寒さから暑さへの変化を示唆し、農業への温暖化の影響が深刻な構造的問題となっていることを強調した。
高温農業対策と課題
岡部氏は、気候変動による高温が農業に与える影響について説明し、米騒動などの事例を紹介した。高温対策として、農家が「にじのきらめき」などの高温耐性品種の導入、バイオスティミュラントの使用、扇風機やエアコンの設置などを実施していることが報告された。コスト増加が主要な課題として挙げられ、資材費の増加や早朝・夜間作業の必要性が、農家の声から明らかになった。
農業と太陽光発電の統合
深野氏は、農業と自然エネルギー、特に太陽光発電の統合について講演した。農家が高温対策や脱炭素対策を実施する必要性を強調し、特にソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の可能性について説明した。自然と人間社会の間の相互作用について研究していることを紹介し、農業と再生可能エネルギーの競合関係を明確にした上で、その解決策を模索する必要性を強調した。
営農型ソーラーの収量調査結果
深野氏は、営農型ソーラーの現状について調査を行い、2018年から2023年にかけて認可された施設のデータを分析した。研究結果では、遮光率を30%に固定した場合、土地利用型の作物(水田、牧草地など)では8割の収量確保が困難な事例がある一方、果菜類や果樹などでは8割の収量を達成し、遮光しない場合よりも収量が増加した例もあるとした。
深野氏は、遮光率の問題を解決するための技術開発の必要性を強調し、千葉大学の水田での実験や、ドローンによる空撮を用いた収量測定の方法についても言及した。
営農型ソーラーの多機能性
深野氏は、営農型ソーラー(アグリソーラー)の多機能性について、食料生産だけでなく、防災、景観、文化的価値などの面でも、一般的な農地と同様に重要であることを強調した。
メガソーラーとの比較では、営農型ソーラーは社会とのコンフリクトを抑えやすく、景観面で受け入れられやすいことや、多面的な利点があることを説明した。
政府のエネルギー基本計画では、2040年までに再生可能エネルギーの割合を現状の3倍に増やす目標が設定されているが、営農型ソーラーの事業化が困難であることも指摘された。
中山間地域における農業の変革
帶川氏は、中山間地域における稲作とソーラーシェアリングについて、地域の景観と農業の変化を詳しく説明した。茅野市では、水が冷たすぎて稲作が困難だった歴史と、白樺湖や御射鹿池などの土木技術による解決策について言及した。
さらに、農業技術の進化、特に「保温折衷苗代」の開発と農業機械の導入が、地域での米作りを可能にした要因として説明された。
自然エネルギーと農業の両立
帶川氏は、地域の農業が昔から多様な作物や収入源を組み合わせることで、農地と里山の景観を守ってきた歴史について説明した。
現在では、ソーラーシェアリングなどの新しい農業経営スタイルが導入され、農地の維持とエネルギー生産の両立が図られている。高温障害による作柄の悪化や、カメムシ被害の拡大による農薬の不足などの課題もあり、農家には継続的な適応と管理が求められている。
質疑応答
① 温暖化対策における生産者の対応と、リジェネラティブ農業の普及について質問があり、世界的な研究データを基に、営農型太陽光発電の実践について説明した。
② 自治体の役割と、小さな町における脱炭素対策の実施について質問があり、2025年までの日本の動向と、再生可能エネルギーの導入拡大に向けた基準づくりの必要性について回答した。
農業維持と収益性の課題
フロアから、農業の維持と収益性の課題について意見が出され、参加者は、国が農業に対して適切な支援を提供する必要性について話し合った。
講演者は、農業への理解を深めるため、子どもの頃から農業体験を提供することの重要性を強調し、学校における農業教育の必要性について議論した。
また、農業への支援については、国からの直接的な支援が不安定であるため、消費者が国産農産物を選択することの重要性や、農業者自身が取り組みを積極的に発信する必要性について意見が交わされた。
農業・自然エネルギー関係検討会議
農業と自然エネルギー、特にソーラーシェアリングの関係について議論が行われた。参加者は、農業と再生可能エネルギーは必ずしも対立するものではなく、双方にとって利点があることを強調し、社会の認識を変える必要性について話し合った。
また、ソーラーパネルの景観への影響や、農業生産性と遮光率の関係についても検討され、データ不足と複雑な要因を分析する必要性が指摘された。会議の最後には、温暖化対策に対する農業生産者の対応について質問が提起された。
脱炭素・高温対策の進捗
会議では、脱炭素対策と高温対策の進捗について議論された。参加者は、現在の高温対策の重要性を強調し、農業部門と環境部門が分断されている構造が、適応策と緩和策の統合を困難にしていることを指摘した。
会議では、ソーラーシェアリングやリジェネラティブ農業の普及についても話し合われ、参加者は行政の役割と農家の協力の重要性を確認した。
最後に、持続可能な地域環境共生社会の実現に向けた連携の必要性が強調された。
開催告知ページ:https://www.shin-ene.net/information/6974
主催:一般社団法人自然エネルギー新数ネット
共催:持続社会連携推進機構アース・シェルパ
後援:長野県
